今回ご紹介するのは、「“獄門鬼”マサ斎藤vs“コスプレ社長”グレート小鹿」という、マニア垂涎のなんともコアなカードです。誰が知ってんねん、というツッコミは無しで。
どうマニアックかというと、取りあえずこの二人が、オールドファンでその名を知らぬ者はいないというほどの名レスラーだということです。
マサ斉藤もグレート小鹿も、日本のプロレスが盛り上がりを見せてきた1960年代から最近まで戦い続けてきたレジェンドそのものなんですよ(グレート小鹿は73歳で現役)。
比較的新しいファンには、マサ斎藤は天然な解説で大人気を博した「解説のマサさん」、グレート小鹿は大日本プロレスの「社長」として親しみがありますよね。当時、そういったキャラで親しまれていた二人のレジェンドがなんと東京ドームで戦うという面白い展開になりました。
なんと渋いカードか( ;∀;)
事の発端は新日本プロレスと、小鹿社長率いる大日本プロレスの抗争でした。
プロレス団体には大きく2つあって、「メジャー(人気団体)」と「インディー(小規模団体)」に分かれます。
新日本のレスラー陣がインディー団体である大日本プロレスの試合を批判、論争に発展したことから、大日本プロレスは新日本に殴り込みをかけて宣戦布告。東京ドーム大会で対抗戦が組まれることとなりました。
そのひとつが、この「マサ斎藤 vs グレート小鹿」なのです。
大日本勢にとって東京ドームはいわばアウェー。試合前に喫茶店に立ち寄った大日本の選手たちは緊張のあまりに、全員クリームソーダを頼んでしまったとか。
ただ、このような抗争背景を知ったうえで注目すべきなのは、「アウェーでの戦い」です。
新日本のファンにとって、大日本の選手たちは「招かれざる客」なわけです。姿を表せば大ブーイングです。
入場シーンを見て頂ければわかりますが、東京ドームに大音量の『軍艦マーチ』が流れて、小鹿社長が入場してきます。その間、誰一人味方なんていませんよ。
そんな敵しかいないドームのど真ん中を堂々と歩くなんて。想像してみてください。ファンタジーが宿るプロレスの世界とはいえ、普通の人間にはできませんよ。
それをグレート小鹿は堂々とコスプレまでしてやってのけたのです。胸につけた大量の手榴弾や、ファンに対する挑発は「インディーを舐めるな!」という新日本に対する小鹿の強い意思表示だったのかもしれませんね。昭和の「気の強さ」です。
リングに上がってからも、タキシードのまま試合をするという、決して新日本のルールには染まらないインディーの意地が見えます。これが小鹿スタイルであり、大日本のスタイルなのでしょう。
たった一人で新日本に挑んだ男では大仁田厚などが居ますが、グレート小鹿も同様に、アウェーの中で戦い切った男として、私にはカッコよく見えます。
試合内容としては、マサ斎藤の強さが際立つものとなっていましたが、大日本の選手たちも加勢しての攻撃、凶器攻撃など、ヒール的な役割もしっかりこなしています。社長自ら試合を盛り上げるというのは、どこかWWEのビンス・マクマホン会長と重なるところがありますね。
マサ斎藤の必殺技であるバックドロップが見られないまま、足首固めで試合が決まった時、「あれ?」というような気分にもなりますが、それでもグレート小鹿の大仕事を見せつけられた部分が大きいですね。
試合内容的にはファンはあまり納得はしないでしょうけど、この試合カード、そしてインディー団体によってしばしば演じられる「アウェーの戦い」は評価されても良いものだと思うのですが。
私はマサ斎藤も大好きなレスラーなのですが、今回はグレート小鹿寄りで書いてみました。
友人がカラオケで『軍艦マーチ』をよく歌っていて、私も一緒に歌わせてもらう事があるのですが、それも実はグレート小鹿の入場曲であるというのを意識して歌っている部分もあるのです(笑)
まぁ、何はともあれ、今年7月に73歳でベルトを獲得して、日本最高齢のタイトルホルダー記録を更新した小鹿社長。
まだまだ元気でプロレスを盛り上げていってほしいですねぇ。